老いない「脳」の作り方。脳の老化とは?
人は年を取る。それは脳も同じこと。脳の老化を完全に止めることは難しいけど、そのスピードを遅らせることは不可能じゃない。フレッシュな脳を保つために、今できることを知っておこう。
その昔、脳の神経細胞は1日10万個ずつ死ぬと脅されていたが、実は90歳以上になってもそれほど減っていないとか。それどころか、記憶に関わる海馬などではいつまでも細胞新生が続くし、運動によって新生が促進されることも知られている。
では、何が脳を老化させるのか。
他の細胞と同じように、活性酸素による酸化や慢性的な炎症が脳の神経細胞にダメージを与えてしまい、記憶や判断力といった認知機能を低下させると考えられています。
アルツハイマーは脳内にアミロイドβという異常なタンパク質が蓄積して起こり、脳血管性認知症は脳の血管が障害されて生じる。いずれも神経細胞の老化と言えます。
脳老化=認知機能低下を防ぐ工夫は、認知症リスクを下げることに繋がるケースも多い。
脳機能を維持する7大対策
①身体活動
認知機能が正常な人が、将来の認知機能低下のリスクを下げるなら、真っ先に取り組むべきは、身体活動。つまり運動である。
どのような運動も、脳の働きを保つために有益。とくに、筋トレと有酸素運動の組み合わせは、脳の認知機能と実行機能を改善させます。それには、運動により筋肉、骨、肝臓、膵臓などから分泌される情報伝達物質のエキセルカインも関わります。
では、どのくらい運動すべきか。
WHOのアドバイスは、週150分以上の中等度の有酸素運動に加え、主要な筋肉を鍛える筋トレを週2回以上行うこと。少々ハードルは高いけれど、いつまでも若々しい脳を保つ確実は投資だと思って頑張ってみたい。
②栄養的介入
運動と並ぶ脳老化予防の大きな柱は食事。
WHOが脳老化を防ぐ食事として名指しするのは、地中海食。地中海沿岸で古くから食べられていた伝統的栄養食である。
特徴は、野菜、果物、豆類、ナッツ、魚類、未加工の全粒穀物などが豊富であり、オリーブオイルを調理に用いる。ご飯を玄米に替えて、野菜や魚をオリーブオイルで調理すれば、日本人も実行しやすい。果物やナッツはおやつで食べよう。
個別の栄養素では、魚類からDHAやEPAといった多価不飽和脂肪酸の摂取が、健康な人の記憶力低下を抑えるという報告がある。
ただし、ビタミンB.E、多価不飽和脂肪酸、複合サプリメントは、認知機能低下や認知症リスクを減らすには推奨されないとWHOは指摘している。なるべく食事から摂取したい。
③禁煙、禁酒
タバコやアルコールは万病の元。生活習慣病のリスクとなり、身体を老けさせ脳のエイジングを進める。
脳老化を食い止める上でより重要なのは禁煙。認知機能低下と認知症リスクの低減が期待される。
お酒で注意が求められるのは、まずアルコール依存症。危険で有害な飲酒を減量または中断することを目的とした介入は、他の健康上の利点に加えて、認知機能正常または軽度認知症のリスクを低減するために行われるべきである。
④メタボ対策
人は血管とともに老いるという名言がある。その指摘通り、脳を養う血管にダメージが及ぶと、脳老化を促進しやすい。また、認知症のおよそ20%を占めている脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などにより脳血管が障害を受けて起こる。
そこで気をつけたいのが、高血圧、糖尿病、脂質異常症といったメタボ系の生活習慣病。このうち高血と糖尿病は、血管が詰まりやすくなる動脈硬化の危険因子であり、血管のエイジングに左右する。
高血圧患者は4000万人超、糖尿病かその予備群は約2000万人とされる。国民全体が気をつけるべき疾患である。
⑤睡眠
多忙だと睡眠不足になりがち。睡眠不足は、アルツハイマー型認知症を引き起こすアミロイドβの蓄積を促しやすい。
アミロイドβは、ノンレム睡眠中に脳の外へと排出されています。ですから、ノンレム睡眠が足りないと、アミロイドβが脳内に溜まりやすくアルツハイマー型認知症のリスクが上がる恐れがあるのです。
早起きして朝日を浴び、日中活動的に過ごし、夕飯以降強い光を避ける。体内時計に従った生活リズムで眠りの質を上げよう。
⑥歯周病対策
30代以上の3人に2人が密かに患っている国民病が歯周病。
歯周病菌は血液に乗り全身に広がる。それで脳に炎症が起こると、脳老化の引き金です。
マウスの研究では、歯周病菌がつくる炎症物質は、アルツハイマー型認知症をもたらすアミロイドβを作ることが分かっている。さらに、歯周病菌はアミロイドβをキャッチする受容体を増やし、脳の外で作られたアミロイドβまで取り込むようだ。
また、歯が抜けたまま放置していると認知症になりやすいという報告がある。恐らく咀嚼力が落ち脳の血流量が減り、神経細胞に悪影響が及ぶのだろう。
なぜかWHOはスルーしているが、歯周病対策は非常に大事である。地道な歯磨きで歯周病菌のすみかとなるプラークを除去。3〜4ヶ月に一度は歯科クリニックで専門的クリーニングを。