今増えている慢性腎臓病は寿命に影響大!?知らないとやばいトリセツ
地味ながら黙々と働き続ける腎臓。これが働くなったら命に関わる重要な存在である。ところが近年、若くして腎臓が衰えているケースが増加中とのこと。
人生100年時代、大切な腎臓をいつまでも長続きさせるには?その方法を探っていきます。
「排毒」の臓器、腎臓は40代以降どんどん縮んでいく。
肋骨の後ろ側にある空豆状の1対の臓器、握りこぶしよりちょっと大きいサイズの臓器は、心臓や消化器と違って普段ほとんど意識することがありません。肝臓に負けないぐらいの我慢強さを備えているので、多少不具合があっても黙って働き続けるからだ。
ところが、実はこの臓器が老化の鍵を握っているという。
とくに、食生活が乱れがちな40代以降の男性は慢性腎臓病のリスクが高く、老化を早める可能性があります。と言うのは、腎臓専門医の高取優二先生。
腎臓は全身の細胞から血液によって送られてくる老廃物をふるいにかけ、不要なものを尿として排泄する役割を果たしている。ふるいをかけるフィルターに当たるのは糸球体という組織。糸球体でろ過されたのが原尿で、原尿が尿細管で99%再吸収された残りが尿。この糸球体と尿細管のユニットをネフロンと呼ぶ。
便は2~3日、排泄されなくても命には関わらないが、尿はたった1日排泄されないだけでも尿毒症を引き起こし、命の危険に犯される。ところが、この大事な「排毒」の臓器は加齢に伴って縮んでいく。糸球体は毛細血管の固まりなので動脈硬化などの影響でネフロンが機能しなくなり、脱落していくのだ。40代で腎臓の縮小は始まっている。
8人に1人が慢性腎臓病。
その昔は、むくみや行き苦しさが出たら尿毒症で、すでに腎不全の状態。見つかった時は手遅れ。でも約20年前に登場したのが慢性腎臓病(CKD)という概念。より早い段階で腎臓機能の低下を判断できるようになった。
今は8人に1人がCKDと言われています。加齢による腎臓の変化に加えて糖尿病や肥満、腎臓特有の疾患が重なるとCKDのステージが進行し、人工透析に陥る方向に急激に傾いていきます。
生活習慣病の因子を避けることがCKD予防のひとつ。でも、それだけではない。食生活を中心としたライフスタイルが大きな問題。老化の要因は遺伝が2~3割、環境が7~8割というように、腎臓の老化も食生活が大きな比率を占めています
余分なリンとカルシウムが身体の炎症と老化を招く
では、食生活の何が問題かというと、加工食品に含まれているリンの過剰摂取である。
動物実験では、血液中のリンが上昇するとマウスが早く老いることが分かっています。メカニズムとしては、体内で余分なリンとカルシウムが結合してリン酸カルシウムができます。これがCPPという結晶状の物資を作り出し、血管や尿細管を傷つけて体内で慢性炎症を起こすのです。慢性炎症が老化の原因になることは、すでに述べた通り。CPPによる炎症もまた同じ。
それだけでなく、加齢でネフロンの数が減ってくるとネフロン1つあたりのリン負荷が上がります。すると、さらに尿細管が痛めつけられるという悪循環に陥るのです。
腎臓の老化は日々の習慣で7割抑えられる
①外食・中食を必要最低限にする
現代人にとってリンが不足していることはまずありません。とくに40代の男性であれば不足より断然過剰摂取が問題になります。過剰摂取の原因は加工食品、ハムやベーコン、インスタント食品、ファストフードなどに多く含まれます。リンの過剰摂取で腎臓はリンの排出に追われますが、ただでさえネフロンが減っているので負荷が大きすぎて、ますます機能低下が進むことになります。
②アルカリ性食品を常備する
細胞の組織液や血液のPHは、ナトリウムやカリウムなどの電解質の割合で変化する。そして、PHが弱アルカリ性の状態だと細胞は正常に働く。
体液のPH維持も腎臓の働きの一つです。体液が酸性に傾いているときは尿細管で電解質の量が調整され、PHバランスが保たれています。ところが、腎臓の機能が低下すると、調節機能も衰えて体液が酸性に傾き、それ自体カラダを老化させる原因になります。
アルカリ食品の代表は、海藻、梅干し、大豆、エンドウ豆、にんじんやほうれん草があります。
③ニンニクや瓜食品も積極的に
スイカやメロンに含まれるシトルリンというアミノ酸はたんぱく質の構成成分にはならず体内に溜まる特性を持つ。役割は、肝臓でアンモニアの解毒に関わったり、腎臓でアルギニンに変換されて再びシトルリンが合成されるときに一酸化窒素を作り出す。NOは血管拡張作用があることが知られているので、ネフロンの動脈硬化の抑制効果も期待できる。さらに、利尿作用によって腎臓の働きをサポートしてくれる。この夏は、スイカやメロン、にんにくで腎臓を労ろう。
④乳製品はたまに口にする程度に
牛乳、チーズ、ヨーグルト、などの乳製品にはリンが豊富に含まれているので、過剰摂取に注意しましょう。
⑤たんぱく質は動物性よりも植物性
たんぱく質にもれなくついてくるのがリン。よって吸収の良すぎる無機リンよりも有機リンを選ぶことが鉄則。動物性のリンの吸収率が30~40%としたら植物性は10~20%です。毎日のおかずを肉や魚の動物性食品で補うのではなく大豆食品などを取り入れていくのも良いでしょう。
⑥ナッツ類、ほうれん草をこまめに摂る
ミネラルの一つ、マグネシウムに腎臓を守る働きがあることが近年の研究で明らかにされています。動物実験では糖尿病のラットにマグネシウムを与えると腎障害が抑制されたという報告があったり、人を対象にした比較研究でも血中のマグネシウム濃度が低いグループはCKDの発症率が高かったという。
マグネシウムを摂取することによって、リン酸カルシウムからCPPが合成されるのを抑制できると考えられています。マグネシウム補給には、ナッツやほうれん草を!
⑦塩は精製塩ではなく天然塩に。
腎臓の機能低下対策といえば減塩。腎臓は体内の余分な塩分を排泄するので、塩分過多だと腎臓の負担になる。量を減らすことはもちろんだが質にこだわることも必要です。精製塩は99%が塩化ナトリウムです。それに対して天然塩にはナトリウムの他にマグネシウムやカリウム、カルシウムが含まれています。腎臓の負担になるのはナトリウムですが、カリウムが入っていることでナトリウムの塩分負荷を打ち消せますし、他のミネラルの健康効果も期待できます。