「グルテンフリー」を真面目に考えてみる。
糖質制限についてしらべていると「グルテンフリー」の文字を見かける機会は多くないだろうか。たしかに小麦も糖質ではあるがその狙いは異なる。じゃあいいか、というと、そうでもない。正しく知って正しく付き合おう。
そもそもグルテンフリーって何だ?
プロテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチが書籍で明かした食事法で一躍有名になった「グルテンフリー」。この食事法を導入したことでジョコビッチのパフォーマンスは爆上がり、たちまちトッププレーヤーへと上り詰めた。以来、意識高い系の人々が彼に続けとばかり実践しているという話。
とはいえ、イメージ先行で実際グルテンフリーって何?という人は多いのではないだろうか。パンやパスタなどの炭水化物を控える食事法ということから糖質制限と混合されがちだが、実は似て非なるもの。
「グルテンフリーはもともと欧米で見られるセリアック病という病気の患者のための食事療法です」と言うのは、みらい胃・大腸内視鏡クリニック院長の福島先生。
「グルテンは小麦、大麦、ライ麦などの麦類に含まれるグリアジンとグルテニンというたんぱく質が水分に触れたときに作られる成分のこと。セリアック病はこのグルテンに異常反応することで小腸の細胞が壊されてしまう自己免疫疾患です。アメリカでは1%という頻度で発症すると言われていますが、今のところ日本人に患者はほとんどいないのが現状です」
パンを常食する欧米人に比べ、米という主食がある日本人はまだセーフ?という訳でもないようです。
日本人にグルテンフリーは必要なのか?
日本人にはセリアック病患者はほとんどいない。ならば、わざわざグルテンフリーな食生活を選択する必要はなさそうに思えるが…。
日本人は欧米人に比べると小麦の摂取量が少ないため今はまだ目立っていない可能性はあります。ただ、過敏性腸症候群の一部の人はグルテン不耐症に当てはまるとも言われています。ちょっとした日々の不調にグルテンが多少関与している可能性はあるので、グルテンフリーをひとつのきっかけとして自分の食生活を見直すという考え方は良いと思います。
米が主食とはいえ、その消費量は年々減っていく一方の日本人。国民1人が消費する米の量は60年代に比べて2022年はなんと約半分。朝はパン、昼はうどん、夜はパスタ。そんな食生活が珍しくないという人。食後、お腹が痛くなって下痢をする、仕事の集中力が続かない、とにかくだるくてやる気がしないという人。もしかしたらその原因を辿っていくと、小麦由来のグルテンに辿り着くかもしれない。小麦断ち、一度試してみる価値はありそう。
「うどんやそうめんは消化がいい」は嘘。
猛暑で食欲がないときはそうめん、風邪をひいたときは卵とじうどん。消化の良い小麦の麺類は体調の悪いときのベストチョイス。というのは思い込みで、のどごしが良いので食べられると言うことと消化が良いということが混同されているだけです。
肉や魚などのたんぱく質が胃の中で1時間くらいで消化されるのに対して、うどんなどは7~8時間程度、そのままの形で胃の中に残っています。これは小麦だけでなく米でも同様で、炭水化物が入ってきても膵臓は本気で消化酵素を出さないことが原因です。
胃の滞留時間は長いが小腸からは速やかに吸収されるのが炭水化物の特徴。人類が穀物を安定栽培して摂取するようになってから1万年程度。膵臓が本気を出さないのは、人の消化システムが虫や肉などのたんぱく質中心に合わせた構造のままだから、とも考えられているようです。
小麦は主食ではなく嗜好品という考え方
おすすめは「朝食にパンを食べない」ということ。まずはできることから始めて全体量を減らすこと。現代人は明らかに小麦を食べ過ぎているようです。お酒も飲み過ぎればカラダに悪いことが医学的にも証明されていますが、うまく付き合えば健康を損なわずにすみます。それと同様に小麦などの穀物との付き合い方を考える時期がきていると思います。
ホモ・サピエンスが誕生してからおよそ30万年。穀物との付き合いはほんの1万年。人類はまだ穀物初心者です。それなのにいきなり小麦まみれ食生活をすれば無理が生じるのは当たり前。小麦はたまに楽しむ嗜好品として付き合うと良いでしょう。